古今東西、歴史に埋もれた〈女戦士たち〉の伝記
『WOMEN WARRIORS:An Unexpected History』(パメラ・D・トーラー)
日本語版を2022年初夏に出版します!
古代の女王、革命戦士、奴隷解放の闘士、先住民戦士、騎馬武者、女性軍隊の将軍……
私たちが知るよりはるかにたくさんの女性たちが、ときに武器をとり戦ってきました。
そのことがあまり知られてこなかったのは、伝統的に歴史が男性のものとされてきたからです。とくに日本では、単なる異端とみなされたり、極端に女性性を盛られ記号化されて消費されたり……。 本書は、歴史・考古学など最新の研究も踏まえ、鋭いジェンダー視点を交えながら、数千年にわたる〈戦闘の女性史〉をひもときます。
英雄でも例外でもなく、戦った女性たちには千差万別の理由と、ライフヒストリーがあったはず。
〈ロマン〉と家父長制論理にまみれた、女性不在の戦史に終止符を。
ここでは、原著の書評や関連情報をお知らせしていきます。
●書評●
「パメラ・トーラーの文章は、いつだって私を楽しませてくれる。本書でも、とっても頭の良い親友から、歴史の話を聞かせてもらっている気分になった。そのウィットに富んだ説明で、戦う女性たちの歴史を全く新しい視点から見つめ直すことができた。あらゆる時代や国を訪れては、先頭に立って戦った女性たちの知られざる歴史を見つめながら、なぜその存在が隠されてしまうのか説明されていく。一流の研究者である著者は、その深い知識と軽やかで魅力的な文体で、戦う女性たちの本当の姿を教えてくれる」 —エリザベス・レッツ 、ニューヨークタイムズ・ベストセラー『The Perfect Horse』作者
「著者トーラーによる、この愉快で魅力的で、極めて重要な女性戦士の歴史は、こちらの予想を見事に裏切ってくれた。読み始めればすぐに、偉大な女性についての伝記(特に10代読者を対象としたもの)にありがちな英雄譚などではないことに気づくだろう。本書には立派な女性ばかりでなく、残虐で恐ろしい女性も登場する。だが彼女たちは、間違いなく戦士であった。
著者は、女性戦士を“取るに足らない例外”として軽視する男性歴史家たちに反論し、彼女たちが歴史上でいかに普通の存在であるかを明らかにしていく。あらゆる大陸、戦場を巡っては、自分の家族、部族、国のために命をかけて戦う女性たちを紹介していく。魅力的な文体とユーモアに満ちた脚注でもって、忘れ去られた歴史への旅へと誘ってくれる非常に楽しい読書体験であった。有名なジャンヌ・ダルクから、長年見過ごされてきたバッファロー・カーフ・ロード・ウーマン(あのカスターを殺したとも考えられている)まで、さまざまな女性たちの物語からは学ぶべきことも多い。全ての図書館に置かれるべき、女性戦士にまつわる歴史書の決定版である」『Booklist(STARRED Review)』
「本書は“アカデミックな反逆者”を自称するパメラ・D・トーラーによる、たいへん興味深く、素晴らしい女性戦士史である。勇猛果敢に戦地に赴き、敵の男たちを打ち負かした女たちの姿を、世紀と大陸を越えて見せてくれる。
ローマ帝国に反旗を翻したブーディカから、第二次世界大戦中のロシアで初めて女性だけで結成された部隊を指揮したマリア・ボチカリョーワまで、歴史に埋もれた偉大な女性戦士の存在がこれでもかと紹介されていく。
タイトルでは“意外な”歴史(an unexpected history)とされているが、女性と戦争を知る上で、最も歓迎すべき、必須の歴史書であろう」—ページ・バワーズ『The General’s Niece: The Little-Known de Gaulle Who Fought to Free Occupied France』作者
「女性戦士の歴史について書かれた一冊。興味深く、かつ情報に富み、あらゆる時代と地域を網羅しながら、戦闘という行為が生まれたときから女性戦士も存在していたこと、そしてその事実の重要性を説いていく」—ジュリア・カストナー(司書)、『Shelf Awareness』
「『The Heroines of Mercy Street』の著者パメラ・D・トーラーは、一般で考えられているよりもずっと多くの“戦う女性”が存在したことを、読者に知ってもらいたいと願う。著者の説明によれば、何千人もの女性について調査・分類が行われ、そこから厳選した人物が本書で取り上げられているという。
子供のために戦う母親、父親に感化された娘、領土や夫を守る女王や寡婦、戦場に立つために男を装った者、逆に女であることを隠さずに戦った者など、様々なパターンがある。
西洋以外の国の、あまり知られていない人物も数多く紹介されており、アラビアの女王マヴィアやベトナムの徴(ちょう)姉妹が、ケルトの女王ブーディカやジャンヌ・ダルクとともに登場するのも素晴らしい。その解説からは、著者がいかに情熱をもって調査したかが伝わってくる。歴史に埋れた女性たちを、力強い声で紹介する名著である」
「本書では、古代から20世紀に至るまでの世界各地の女性戦士が取り上げられている。すでに知っている名前も見られたが、これまで知らなかった女性もたくさん登場した。彼女たちのストーリーはどれも刺激的で、自分でもさらに詳しく調べて、他の人に教えたくなるものであった。
女性たちがいた時代や場所は様々だが、常に歴史的・社会的な背景とともに語られるため、そこでどんなことが主張されているのか流れも把握しやすい。驚くべきことに彼女たちは、戦闘や戦争が日常的に行われていた時代において例外的な存在ではなかった。
「トーラーは明快で生き生きとした描写でもって、戦いに身を投じた女性たちの複雑な歴史を紐解きながら“女が戦いに参加したことはなく、女性戦士などいなかった”という誤った俗説を覆していく。最近では、歴史の影、特に“男の世界”とされてきた戦史の影に隠れた女性たちに光を当てようとする作品が増えつつあるが、本作もまさにその流れを汲むものである」—アン・ボイド・リウー、『Meg, Jo, Beth, Amy: The Story of Little Women and Why It Still Matters』作者
「古くから世界中の女性たちが、様々な理由で争いに参加してきた。パメラ・トーラーはそんな女性たちを鮮やかに紹介し、“戦争は男だけのもの”という古くさい考えに終止符を打つ」
—エイドリアン・メイヤー、『The Amazons: Lives and Legends of Warrior Women Across the Ancient World』作者
and more…
*オンライン・ブックストアAuthors in Pajamasの特集「歴史に埋もれた偉大な女性たちについて書かれた本6選(Amazing Women, Unexpected History)」で紹介されました。
*ウェブサイトThe Lily(ワシントンポスト)のコーナー「Spotlight」で取り上げられ、本書に登場する4人の女性がイラストともに紹介されました。
*ナショナル・ジオグラフィックで取り上げられ、本書に登場する9人の女性も紹介されました。
●パメラ・トーラー プロフィール●
歴史学の博士号、使い込んだ図書カード、そして尽きない好奇心を武器に作家、講演者、歴史学者として活躍。一般の読者を対象とした史学の翻訳も手がける。母国アメリカ史だけでなく世界各地の歴史、そしてあらゆる戦場の裏で起こっていた性差別・人種差別も取り上げる。これまでに『Women Warriors: An Unexpected History』(2019年2月、BEACON PRESS)をはじめとする8冊の歴史書(児童向け・一般向け)を上梓。ほか、雑誌『Aramco World(アムラコ・ワールド)』、『Calliope(カリオペ)』、『ヒストリーチャンネル・マガジン』、『MHQ: The Quarterly Journal of Military History』、またウェブサイト Time.com などにも寄稿。
19世紀、西アフリカのダホメ王国で権勢を誇った女性戦士軍団「アマゾン」。
●本書とともに楽しみたい、関連トピックス●
*西アフリカ・ダホメ王国に実在した女性だけの軍団「アマゾン」を描く映画が製作中
→『オールド・ガード』の監督ジーナ・プリンス=バイスウッドがメガホンをとる歴史大作映画『The Woman King』がハリウッドで制作中。アマゾン軍団の将軍と娘の話、フランスとの戦いが軸だそう。
キャストに『キャプテン・マーベル』『007 NTTD』のラシャーナ・リンチ、ヴァイオラ・デイヴィス、『ブラック・パンサー』のルピタ・ニョンゴの出演が決定。
メインキャストに加えて、監督・プロデューサー・脚本がオールフィメール!!!
*女性軍団「アマゾン」がモデルの「ドーラ・ミラージュ」が登場する『ブラックパンサー2』が2022年公開
*西アフリカのフェミニスト音楽グループ「アフリカのアマゾネス」が人気急上昇中。
アマゾンの歴史の掘り起こしが進み、ミュージシャンも元気です。
伝統音楽にエレクトロ、HIPHOPを交ぜていくスタイル。かつて女性は使用が禁止されていた伝統楽器を使いまくっているのがアツい。歌うテーマはもちろんフェミニズム。
*2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』にて久しぶりに巴御前がお目見え
巴御前は『WOMEN WARRIORS』原著の表紙を飾っています。
●花束書房よりまだまだメッセージ●
女性と平和を結びつける考えは伝統的にあります。母親が平和をのぞむのは「母性」があるから当然だ、という考え方は典型的でしょう。
あるいは、女性兵士を語るは真のフェミニストではない、戦争に反対することこそ女性のやるべきことだ、という考え方もある。――これは一面ではたしかにそうでしょう。日本ではそれが「お作法」のようにもなっています。
ではなぜ、女性の平和運動はずっと無視されてきたのでしょうか。
それは、数千年にわたる家父長制社会が、「男の仕事」、女性は「生命を産み育て家を守る存在」という二分法で戦争システムを続けてきたからです。軍事を語るのは男性の仕事、とされてきたのもそのためだし、男性の「身体の優越性」はいまだに根強い「常識」です。
じつは、これらはみな間違い。古今東西の女性たちが戦を好み、暴力も好んできたことは歴史が証明しています。ところが古くから歴史家たちは、フランス革命の「民衆の行進」で暴力をふるった女性たちも、中世の一揆や暴動に加わった女性集団も、「例外」「理性を失ったから」だとみなし、教科書では脚注に追いやってきました。それはなぜか。
戦争の英雄が女であってはならなかったからです。それはジェンダーの逸脱であり、「魔女」である――だからジャンヌ・ダルクは処刑されました。
でも、戦争は人間の本能ではないし、「自然」でもないはず。
戦争を産み出す装置こと家父長制は女から力を奪い、男から人間らしさを奪ってきました。男が生命を育むことから遠ざけられた一方で、女はそれが「自然」であるがゆえに劣った、穢れた存在だともされてきた。
この家父長制がもはや不要なことは、世界中が気づいています。
この悪しき呪いを歴史に葬り去るためにも、日本ではタブー視されつつある「女性と戦闘」の歴史を、今こそたどってみてください。
Comments